近年、企業を取り巻く景況が厳しい中、働く人からは「リストラ」を心配する声が大きくなっています。
かつては長期雇用が当たり前だった日本の企業文化も大きく変わり、企業に染み付いた「年功序列」という風土・常識も崩れつつあります。
それどころか、勤続年数が長い人ほど、人員整理の対象に選ばれる可能性が高くなるケースもあります。
今回の記事では、リストラの実態と、勤続年数別のリスク、およびリストラの回避戦略、そして予期せぬリストラをチャンスに変える方法について、詳しく解説します。
あなたのキャリアと未来を守るための、実践的な知恵と戦略をお届けします。
| ＜目次＞ |
リストラは“勤続年数”で決まるって本当？
リストラとは、re-structuring （ リストラクチャリング ）という英語を文字った和製ビジネス用語で、組織の再編や再構築をする上で行う人員整理のことを指します。
リストラの対象となる従業員には一定の傾向があります。
企業の財務状況や業界の変化によって違いがあり、一般的に勤続年数の長い人ほど対象となりやすいといわれていますが、例外もあります。
ここでは、それぞれの勤続年数ごとにリストラのリスクについて詳しく解説します。
勤続5年未満：若手は対象になりにくいが例外もある
通常、勤続5年未満の社員はリストラの対象になりにくいとされています。
企業側にとって、若手社員は
- 給与が低く、コストがかからない
- 成長の可能性があり、将来の戦力になる
- 新しいスキルや変化に柔軟に対応できる
といった理由で、積極的に手放すメリットが少ないためです。
むしろ、若手はこれからの会社を支える存在として期待され、リストラよりもむしろ育成に力を入れるケースが多いでしょう。
しかし、以下のようなケースでは、勤続5年未満の社員でもリストラ対象になる可能性があります。
- 業績不振による早期選別
「新卒一括採用したが、事業縮小で一部を整理」など - 能力不足と判断された場合
「研修期間を経ても戦力にならない」と見なされるケース - 契約社員や派遣社員の契約打ち切り
正社員よりも先に雇用調整の対象になる
特に外資系企業やベンチャー企業では、成果主義の考え方が強く、「若手でもパフォーマンスが悪ければ早期退職を促される」ことがあります。
勤続10年前後：中堅層はリストラされやすい
勤続10年前後の中堅層は、リストラ対象になりやすい層の一つです。
その理由として、以下の点が挙げられます。
①給与が上がり始めるタイミング
入社して数年は給与が低いので、その社員にかかる人件費が経営上の問題になることは少ないです。
が、勤続10年を超え、それなりのポストに就くようになると、役職手当などが加わり、コストが増加していきます。
このタイミングで企業から「コストがかかる割に経営貢献度が低い」と判断された場合、リストラの候補になりやすいです。
②ポジションの飽和
中堅層は管理職への昇進を目指す時期ですが、ポストが限られているため「昇進の見込みが薄い社員」がリストラ対象になりやすい傾向があります。
特に年功序列が崩壊しつつある企業では「ポジションがない＝不要な人材」とみなされやすくなります。
③新しいスキルへの適応力
企業のビジネスモデルが変化する中で、最新技術や新しい業務フローに適応できない社員は、会社にとっての価値が低くなります。
特にITやデジタル化の進む業界では「学び直しができない中堅社員」が切られやすい傾向があります。
④リストラのターゲットにしやすい層
企業にとって、中堅層は「まだ転職市場で再就職がしやすい」という点もリストラ対象になりやすい理由の一つです。
「再就職できる可能性がある人」を優先的に整理し、ベテラン層は逆に温存されるケースもあります。
勤続20年以上：ベテラン社員もリストラのターゲットに
一方で、勤続20年以上のベテラン社員も、リストラのターゲットにされやすいです。
その主な理由は以下の通りです。
①給与コストが高すぎる
長年勤めている社員は、、基本給や賞与、各種手当が多く、企業にとっての負担が大きくなります。
特に業績が悪化した際、コスト削減のためにベテラン社員が真っ先にリストラ対象となるケースが多くあります。
②柔軟性の欠如
長年同じ環境で働いていると、新しい仕事のやり方や最新技術に適応するのが難しくなる傾向にあります。
「昔ながらのやり方に固執する」「変化を嫌う」といったイメージを持たれると、リストラの対象にされやすくなります。
③管理職であっても安泰ではない
ベテラン社員の中には管理職についている人も多いですが、「役職定年制度」などでポストを外された後、リストラの候補にされるケースも少なくありません。
また、「高コストな管理職よりも若手リーダーを育てる方が効率的」と考える企業も増えています。
④会社の若返り政策
企業が組織の活性化を図るために、ベテラン層を削減し、若手を登用する動きが加速しています。
特に40代後半～50代の社員は、「企業にとってのメリットよりもコストの方が大きい」と判断されると、リストラの標的となりやすいのです。
リストラを回避するにはどうすればいい？
リストラは企業の経営判断によって実施されるため、個人では完全に防ぐことは難しいかもしれません。
しかし、リストラの対象になりにくい人材になるための対策はあります。
この章では、リストラを回避するために重要な3つのポイントを解説します。
スキルのアップデート：人材の価値を高める
企業がリストラ対象を選ぶ際、よく挙げられる基準のひとつが「価値のある人材が否か」です。
単なる年功や社歴ではなく、「会社にとって必要なスキルを持っているか」が重要になります。
そのため、以下のような方法でスキルを磨くことがリストラ回避につながります。
①最新の業界動向を把握する
- 自分の業界で求められるスキルや知識がどう変化しているかを知る
- AIやデジタル技術など、どの業界でも求められるスキルを身につける
- 競合他社の動きや、自社の方向性を把握しておく
②学び直し（リスキリング）を行う
- オンライン講座や社内研修を活用し、新しいスキルを学ぶ
- 語学、プログラミング、マーケティングなど、転職市場でも評価されるスキルを身につける
- 業務の幅を広げることで、「この人はまだまだ活躍できる」と評価されやすくなる
③資格取得や専門性を高める
- 業界で評価される資格を取得する（例：IT業界ならAWS資格、会計業界なら簿記など）
- 専門性を強化し、「この分野なら任せられる」と思われる存在になる
社内外のネットワーク強化：転職や異動の選択肢を持つ
リストラされる可能性が高くなったら、いち早く別の選択肢を選べるようにしておくことも重要です。
そのためには、社内外のネットワークを広げておくことが役立ちます。
①社内ネットワークを強化する
- 社内の他部署との関係を築き、異動の可能性を探る
- 自分の仕事ぶりを評価してくれる上司・同僚と信頼関係を築く
- 会社の成長分野や新規プロジェクトに関わる機会を増やす
会社内での存在価値を高めることで、リストラの候補から外れる可能性がある。
②社外のネットワークを活用する
- 業界の交流会やセミナーに参加し、外部の人脈を作る
- LinkedInなどのSNSを活用し、転職市場での自分の価値を知る
- 転職エージェントに登録し、万が一の時に備える
会社に依存せず、他の選択肢を常に持つことでリストラされてもすぐに動けるようにする。
会社の動向を読む：危険な兆候を察知する方法
リストラは突然実施されるように見えますが、実際には前兆があります。
リストラを回避するには、いち早く危険な兆候を察知し、事前に対策を打つことが大切です。
①会社の財務状況をチェックする
- 決算報告書やIR資料を確認し、売上や利益の傾向を把握する
- 経費削減の動き（出張制限・採用凍結・ボーナス減額など）が出ていないか
- 同業他社と比較し、競争力が低下していないか
②リストラの兆候を見極める
- 幹部や管理職の交代が頻繁に起こる
- 外部コンサルティング会社が入って業務改革が進んでいる
- 退職勧奨や早期退職制度が導入され始める
こうした兆候が見えたら、転職準備やスキルアップを加速させる。
③会社の成長分野にシフトする
- 事業縮小の対象になりそうな部門から、成長分野の部門へ異動を狙う
- 会社の経営戦略に合わせ、自分のスキルや業務内容を調整する
- 例えば、製造業であれば「DX（デジタルトランスフォーメーション）」に関連するスキルを身につける
社内での生き残り戦略を考え、リストラされにくいポジションを確保する。
リストラをチャンスに変える！独立開業という選択肢
企業がリストラを行うということは、その企業の経営状態が芳しくないということの裏返しでもあります。
昨今の日本経済を考えると、大企業といえども生涯安泰というわけではなく、従業員にはいつでも人員整理のリスクが覆いかぶさっています。
そんな中、いっそのこと、リストラや早期退職を活用し、得た退職金を使って独立開業、という選択をする人が増えています。
独立開業をすれば、全て自分の裁量で動かなければなりませんが、頑張った分だけ収入は増えますし、組織の煩わしさやリストラなどのストレスから解放され、自由に仕事ができるようになります。
独立開業にはある程度の気力と時間、お金が必要となりますが、独立開業された方の多くは、「あの時独立してよかった」、「会社をやめるという選択をした自分を褒めてあげたい」など、自分の起こした行動を肯定的に捉えている人が多いです。
「リストラ」という言葉には絶望的な響きがありますが、リストラによって働き方を変える機会が訪れた、ひいては、自分の人生を変えるチャンスが来たという風に考えることもできます。
一寸先は闇、という言葉がピッタリの現代において、リストラを好機と捉え、自分の人生をより豊かにするための行動を取ることができる人が、これからの時代を生きていける人材であると言えるでしょう。
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