「悪いんだけど、今日残業してもらえる？」
就業時間終了直前に上司から言われたくない言葉ナンバーワンは、間違いなくコレですよね。
「残業」という言葉の響きに嫌悪感を覚える方も多いと思います。
全ての仕事に残業はつきものですが、実は業界によって平均残業時間に大きな違いがあることをご存じですか？
今回の記事では、残業が多い業界をランキング形式で発表するとともに、日本における残業の定義（法的な解釈）や、社会全体で長時間労働を見直そうとしているのはなぜなのか、など、残業にまつわるアレコレをご紹介させていただきます。
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＜目次＞ |
【最新データ】残業が多い業界ランキングTOP10
長時間労働が社会問題となる中、特定の業界では依然として残業が多い状況が続いています。
この章では、最新の統計データや調査結果を基に、残業時間が多い業界をランキング形式で紹介し、それぞれの業界の特徴や労働時間の実態を詳しく解説します。
残業が多い業界ランキングTOP10（2024年版）
以下のランキングは、厚生労働省の「毎月勤労統計調査」や民間の労働時間調査を参考に作成しています。
- 1位: IT・システム開発業界
平均残業時間：約60時間/月 - 2位: 建設業界
平均残業時間：約55時間/月 - 3位: 金融・証券業界
平均残業時間：約50時間/月 - 4位: コンサルティング業界
平均残業時間：約48時間/月 - 5位: 広告・出版業界
平均残業時間：約45時間/月 - 6位: 医療・福祉業界
平均残業時間：約42時間/月 - 7位: 運輸・物流業界
平均残業時間：約40時間/月 - 8位: 製造業（特に自動車・機械系）
平均残業時間：約38時間/月 - 9位: 飲食・サービス業界
平均残業時間：約35時間/月 - 10位: 教育・研究機関
平均残業時間：約30時間/月
各業界の特徴と労働時間の実態
1位 IT・システム開発業界
IT業界は、システム開発の納期が厳しかったり、突発的なトラブル対応が求められる場面が多いことなどから、労働時間が長くなりがちな傾向にあります。
また、エンジニアの人材不足により、一人あたりの業務負担が大きいことも、残業が長時間になりやすい原因の一つです。
これに加え、定期的に新技術のキャッチアップのための自主学習もしなければなりませんので、実際の労働時間はさらに長くなることがあります。
2位 建設業界
建設業界は、工期厳守のプレッシャーが強く、納期の直前になると現場作業や管理業務が長時間に及ぶことが多いです。
また、天候などの影響で突然スケジュールが変更になることも多く、イレギュラーな事態で現場が押してしまうことも少なくありません。
さらに、業界全体で若手技術者が不足しており、人手不足も残業時間が伸びる原因の一つになっています。
3位 金融・証券業界
金融・証券業界では、株式市場や国際金融の動向に応じてフレキシブルな対応が求められます。
また、数字の正確性が求められ、業務量が膨大になりがちだったり、クライアント対応のために長時間動き回らなければならない場面も多く見受けられます。
4位 コンサルティング業界
コンサル業界の労働時間が長くなる主な要因は、クライアントごとにキメ細かい対応が必要で、プロジェクト単位での業務負担が大きい、という点にあるといわれています。
また、短納期の案件が多く、少ない時間の中で分析やプレゼン準備に時間を割かなければならないので、1日あたりの業務量が多くなりがちです。
コンサル業界では、深夜や休日の作業が常態化している企業も少なくないといわれています。
5位 広告・出版業界
納期直前の修正対応やクライアントの要望変更が頻繁に発生するため、労働時間が伸びがちです。
クリエイティブ業務の特性上、作業時間が読めないことが多いのも、残業が多くなる要因となっています。
また、サービスの質を高めるための試行錯誤が長時間労働につながっているという指摘もあります。
6位 医療・福祉業界
患者対応のため、勤務時間外の対応が必要となることがよくあります。
また、医療福祉業界は慢性的に人手が不足しています。
そのため、一人あたりの業務量が多くなる傾向にあります。
シフト制ではありますが、業務引き継ぎ作業をせねばならず、この作業が長時間労働につながりやすいという分析もあります。
7位 運輸・物流業界
配送スケジュールの厳格な管理が求められ、拘束時間が長いため、労働時間も長くなりがちです。
業界全体で人手不足状態ですが、EC市場の拡大により、運送業の需要は増加傾向。
その結果、一人当たりの業務量が増え、残業が発生しやすくなっています。
また、交通事情や天候によりスケジュールが乱れがちというのも、長時間労働につながりやすい要因の一つです。
8位 製造業（特に自動車・機械系）
生産ラインの維持やトラブル対応で急な残業が発生することがあります。
加えて、納期厳守のため、繁忙期は特に長時間労働になりがちです。
また、技術革新に伴う設備の更新や研修などの業務が多いのも、労働時間が長くなる要因となっています。
9位 飲食・サービス業界
イレギュラーな顧客対応のため営業時間外の業務が発生することがあります。
また、突発的な欠勤や人手不足の影響で長時間勤務を強いられることも。
加えて、繁忙期には通常よりも業務負担が増加することがあります。
10位 教育・研究機関
研究分野では、授業準備や研究のための自主的な学習時間が多く、労働時間が長くなりがちです。
また、研究費獲得や論文発表のために時間を割かなければならないことも多く、こうした事情も残業時間が伸びる一因となっています。
教育分野では、生徒や保護者とのコミュニケーション業務など、昔に比べてきめ細かい対応を求められる場面が増え、それに伴って労働時間が伸びています。
なぜ残業は発生するのか？各業界の共通点
上記のような業界で残業が多くなる原因はなんなのでしょうか？
残業が多くなりがちな仕事には、以下のような共通点があります。
①人手不足
特に専門職や技術職では人手不足が深刻で、一人あたりの業務負担が大きくなっている。
②納期厳守のプレッシャー
クライアントや取引先との契約上、厳しい納期を求められることが多い。
③企業文化
長時間労働が当たり前になっている業界では、効率的に働くよりも「長く働くこと」が評価されがち。
④業務の属人化
特定の社員にしかできない業務が多く、業務の分担がうまく機能していない場合が多い。
⑤突発的な対応の必要性
IT業界のシステムトラブル、医療業界の急患対応など、予測不能な業務が発生しやすい。
日本における残業の定義（法的解釈）
日本の労働基準法では、「残業（時間外労働）」は以下のように定義されます。
残業の定義①法定労働時間を超える労働（時間外労働）
労働基準法第32条では、以下のように労働時間の上限が定められています。
- 1日 8時間
- 1週間 40時間
この時間を超えて労働した場合、それは 「時間外労働」 に該当し、雇用主側は労働者に対して割増賃金（残業代）の支払い義務が発生します。
残業の定義②法定休日の労働（休日労働）
労働基準法第35条では、 少なくとも週に1回の休日（または4週間で4日）が義務付けられています。
この法定休日に労働を行った場合も、割増賃金の対象となり、「休日労働」とみなされます。
深夜労働（22時～5時）と残業が重なる場合は？
労働基準法第37条では、 22時～5時の労働 を「深夜労働」とし、割増賃金（基本給の25％以上）を支払う必要があります。
これが残業と重なる場合、時間外労働の割増賃金（25％）＋深夜労働の割増賃金（25％）で 合計50％以上の割増 が必要になります。
36協定（さぶろく協定）と残業の上限
企業が従業員に法定労働時間を超えて働かせる場合、 労働基準法第36条に基づく「36協定」 を労働基準監督署に届け出る必要があります。
2019年4月の改正労働基準法 により、残業時間には以下の 上限規制 が設けられました。
- 原則
- 月45時間
- 年360時間
- 特別条項（例外） を結ぶ場合
- 年間 720時間以内
- 1か月の残業が 100時間未満（休日労働含む）
- 2〜6か月の平均が 80時間以内
この上限を超える残業は違法となり、罰則の対象になります。
残業はなぜダメなのか？
一昔前まで、日本では残業に対して寛容な部分がありました。
しかし、ここ数十年で残業がもたらすさまざまなデメリットが判明し、残業は労働者にとっても会社にとっても良くないことだという認識に社会全体が変わってきています。
残業は一時的な業務の調整として必要になることもありますが、長時間労働が常態化すると 個人・企業・社会 にさまざまな悪影響を及ぼします。
この章では、なぜ残業するのがダメなのか、残業のデメリットについて詳しく見ていきましょう。
残業がダメな理由①健康への悪影響（肉体的・精神的な負担）
長時間労働が続くと、過労死やメンタルヘルス不調（うつ病・不安障害）のリスクが高まります。
残業による睡眠不足は集中力の低下や判断ミスを増加させ、疲労の蓄積は免疫力低下や生活習慣病のリスクを増大させます。
これらの精神的、肉体的疲労はストレスを生み、うつ病やバーンアウト（燃え尽き症候群）を招きます。
厚生労働省の基準では、 月80時間以上の残業 を「過労死ライン」と定義しており、これを超えると脳・心臓疾患の発症リスクが急激に高まるとされています。
残業がダメな理由②生産性の低下（パフォーマンス悪化）
長時間働いても、必ずしも成果が向上するわけではありません。
人間は、疲労が蓄積すると作業効率が低下します。
ミスが増えることで、修正作業が発生し、二度手間三度手間になって余計な業務が発生することも。
また、疲れが溜まると、創造力・判断力が低下し、 新しいアイデアが出にくくなることも報告されています。
1日10時間働くより、8時間に短縮し、その分集中して作業する方が生産性が高くなるという研究結果もあります。
残業がダメな理由③ワークライフバランスの崩壊（プライベートへの影響）
残業が増えると、プライベートな時間がその分削られてしまいます。
プライベートな時間が減ると、家族や友人と過ごす時間が少なくなって人間関係が希薄になったり、育児や家事に十分な時間を確保できなくなったり、自己成長の時間（スキルアップ・趣味・休養）が確保できずキャリアの幅が狭まってしまったり、といった弊害があります。
仕事ばかりの生活になると人生へのモチベーションが低下し、最終的に離職という決断を招いてしまうおそれもあります。
残業がダメな理由④企業側のデメリット（コスト増・離職率上昇）
企業にとっても、残業が常態化すると以下のような問題が発生します。
- 残業代の支払いコスト増大（人件費の負担増）
- 社員の離職率上昇（人材確保が難しくなる）
- 長時間労働が常態化すると、 優秀な人材が他社に流出
- 業務効率が悪化し、 競争力が低下
最近では、ワークライフバランスを重視する求職者が増えており、「長時間労働の企業」は採用競争でも不利になりがちです。
残業がダメな理由⑤社会全体の影響（経済・少子化問題）
残業は、労働者と企業間の問題に留まらず、社会全体にも影響を及ぼすという指摘があります。
長時間労働が当たり前になると、労働人口の減少（長時間労働の負担で早期リタイア・転職増）を招いたり、少子化を加速させたり（子育てに時間が取れず、結婚や出産を避ける傾向）、医療費の増加（過労による健康被害で医療コストが上昇）に繋がる可能性もあります。
国全体としても、 「労働時間の長さ」より「労働生産性の向上」 を目指す必要があります。
働く時間を自分で決められる！おそうじ革命で独立開業
残業は、肉体的にも精神的にもつらいものです。
長時間の労働が常態化すると、心身に大きな負荷がかかり、人によっては体や精神に重篤な障害が残ってしまうこともあります。
また、残業は多くの場合、雇用主側からの依頼によって発生します。
そのため、多くの労働者は、自分で残業をするか否かを選ぶことができません。
人は、自分でコントロールできない事態に直面すると、非常に大きなストレスを感じるといわれています。
これも、残業が問題になっている理由の一つです。
残業によるストレスを回避するには、残業がない仕事に就くか、残業をある程度自分でコントロールできる仕事をするのが賢い選択です。
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