日本には、スポーツ選手として活躍していた人が引退した後、就職先など職が見つからず困窮してしまう「アスリートのセカンドキャリア問題」が長年社会問題として存在しています。
現役時代はスポーツ一筋だった人が、引退して未経験の仕事を1から始めるのは非常に大変なこと。また、昨今は雇用の事情も厳しく、実務経験のない働き盛り世代が就職するのは相当に難しいという現実もあります。
今回は、そんな元アスリートのセカンドキャリア問題にスポットを当て、元プロが第二の人生で遭遇しがちな「苦悩」について
・元アスリートのセカンドキャリア問題とは?
・セカンドキャリアでの苦悩① 30〜40代で未経験 潰しがきかない!
・セカンドキャリアでの苦悩② “負けたくない“気持ちが無理をさせる
・セカンドキャリアでの苦悩③ 培ったプロ精神がアダに…
・セカンドキャリアでの苦悩④ 長い現役生活→再出発は「新卒状態」
上記の見出しで解説させていただきます。
元アスリートのセカンドキャリア問題とは?
日本では1990年代、バブル崩壊の煽りを受け、スポーツ業界の景況も思わしくなくなり、実業団チームの縮小や廃部などが急激に引き起こされました。
一方で、サッカーのJリーグをはじめ、さまざまなスポーツがプロ化され、多くの選手がプロとしてチームに所属する道を選びました。
実業団の場合は、所属選手は母体企業の社員ですので、廃部や縮小で整理された選手はそのままその企業の社員として雇用されますが、選手とチームが年単位で契約を結ぶプロの場合は、契約が切れると会社とその選手との関係も解消されてしまいます。
また、プロ選手は現役期間が短いため、引退したら別の仕事を始めないと生計を立てることができません。
有名選手であれば引退後に球団のコーチ役やニュース・中継の解説員などなどの、元プロの経験を生かした仕事に就くこともできますが、その仕事を生涯にわたって続けられるのはほんのひと握りです。
そのため、多くの選手は引退後、現役時代とは全く違う仕事に就くことになるのですが、長年スポーツ選手として活動していたため、実務経験のないまま働き盛り世代を迎えてしまうことになります。
経験のない人材は企業も採用に慎重になるため、結果、引退後に職が定まらず生活が困窮してしまう人が出てきてしまいます。
この問題は「プロアスリートのセカンドキャリア問題」として長年対策が急がれています。
セカンドキャリアでの苦悩① 30〜40代で未経験 潰しがきかない!
元プロ選手がセカンドキャリアを構築する上で最も苦戦するのが、引退後の職探しといわれています。
先にも触れましたが、スポーツ選手以外の職業経験がない状態で引退をすることになりますので、どこかの企業に就職しようにもこの「未経験」の部分が足を引っ張ります。
運よく「元プロ選手」という肩書きを生かした仕事に就ける人もいますが、こうした仕事はそもそもの働き口が少なく、現役時代に関係企業へ人脈をつくったりと、入念な準備をしておく必要があるため、雇用のチャンスも均等とはいえません。
こうした現実から、意を決して起業という選択をする人もおりますが、こちらはもっと茨の道。ビジネスについて勉強が不十分なままお店を出したり、会社をおこしてしまい、結果経営が上手くいかず廃業して多額の借金を残してしまう、という人も少なくありません。
セカンドキャリアでの苦悩② “負けたくない“気持ちが無理をさせる
どんな人間でも、慣れない環境に身を置くことは、とてつもないストレスを伴います。
プロの世界で活躍していたスポーツ選手だってそれは同じこと。
しかし、もともと厳しいプロスポーツの世界にいた人は、普通の人よりも「負けたくない」という気持ちが強く、「頑張らなきゃ」と自分を厳しく追い込んでしまいがちです。
結果、ストレスと上手に付き合うことができず、心身に不調をきたして仕事ができなくなってしまう人も多いようです。
第二の人生と意気込んで始めた仕事を、思わぬ形で辞めることになったことでまたさらに自分を責めてしまい、深刻なメンタルの病気にかかって再起不能に、という悪循環に陥ってしまうことも。
セカンドキャリアでの苦悩③ 培ったプロ精神がアダに…
元プロがセカンドキャリアの仕事でぶつかる壁の一つに、現役時代の「プロ意識」があります。
仕事というのは丁寧にやるべきですが、実は細かい部分は結構いい加減だったり、誰かが力を抜いた部分は誰かがフォローするなどして、みんな適度に無理をせず働いているものです。
しかし、厳しいプロの世界にいた人は、この「適度に力を抜く」ということができず、根をつめて仕事をしてしまうことがあります。
結果、無理をしすぎて体を壊したり、仕事に過度な完成度を求めてメンタルを崩してしまう人も少なくないようです。
セカンドキャリアでの苦悩④ 長い現役生活→再出発は「新卒状態」
学生からプロになった人がプロスポーツ選手を引退し、セカンドキャリアとして全く未経験の仕事を始めるとなると、右も左もわからない状態でのスタートになります。
これはいわば「新卒の社会人」と同じ状態です。
あらゆることが未経験の状態から始まるわけですから、最初は慣れないことばかりで、たくさんのことを頭と体に覚えさせなければなりません。
しかも、現役生活が長かった人は、それなりの年齢になってからの再出発ですので、若い頃に比べて記憶力も順応性も衰えており、結果、想像以上の苦労が伴います。
これに加えて仕事相手に頭を下げたり、後輩に教えを乞うこともしなければなりませんので、プロ選手時代とのギャップに苦しみ、挫折してしまう人も少なくありません。
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